vs

勝敗を決するのは、欲張りなあなたの意思ひとつ。


「早死に確定だよね」

「あァ?」


ぷかぷかと煙草の煙を揺らして、トシは怪訝そうにこっちを見た。
いつもの光景、だけど気に食わない。


「煙草。
 吸ってないの、食事中かお風呂か寝てるときだけじゃない。もうちょっと体のこと・・」

「うるせェ」

「・・・・」


せっかくのの助言にも、聞く耳持たず。
真選組内でもヘビースモーカーで有名なトシに禁煙なんて無理なのはわかってるけど、せめて少しでも減らしてほしくて言ったのにこれだ。
の心配なんて一蹴されて終わり。我ながらトシのどこが好きなのかわからなくなってきた。
煙が充満するトシの部屋の隅で、は小さく溜め息を吐いた。


「ガンになっても知らないから」

「はッ」


その言葉に鼻で笑ったトシは、思いっきり煙草の煙を吐き出した。
に見せ付けるかのようなそれは、をあざ笑うかのように顔周りを漂う。
カチンときて、思わずトシの手に収まっている煙草を無理矢理奪った。


「言っとくけど、アンタが先に死んだら困るのはなんだから!」


そう言って睨むと、一瞬ぽかんとした表情を見せたトシは、瞬間顔を真っ赤に染めた。
その表情に怯んだの手をがっちりと掴む。
何時の間にやら奪い返された煙草を視界の端に捉えて、焦る。


「え・・あ、ちょっと!?」

「お前なァ・・」

「え?」


気付いたらトシの赤い顔が近づいて、は咄嗟に顔を逸らした。
つもりだったのだけど、しっかりと後頭部を押さえ付けられて、目を閉じるしか出来なかった。
何をされるかなんて容易に想像出来て、無駄な抵抗だと知りつつも唇をぎゅっと結ぶ。
思った通りにトシの唇が被さってきて、ぬるりとしたものが唇を突付いて来た。
でもやっぱり、思った通りには白旗を揚げて、トシは遠慮すること無く舌を入れ込んでくる。
刹那、感じたのは煙草の臭いと煙たさ。


「〜〜〜〜〜ッ!?」

「ふ、ッ・・」


柔らかい唇から入り込む、トシの舌と煙。
喉まで達する煙たさに涙目になりながら、トシを睨んだ。
今まで吸ったこともない煙を突然、しかも大量に吹き込まれたのだからたまったもんじゃない。
無理矢理身体を引き寄せるトシを何とか引き剥がして咳き込んだ。


「う、ゲホッ・・・なに、すんのッ!?」

「俺がガンになったら、お前もなれ」

「はッ、はぁ・・何・・?」


必死に酸素を取り入れながら、トシの意味不明な言葉に半ば怒り気味で返した。
酸素不足で十分な言葉を返せない為、批判は目で訴える。怒りを込めて。


「一緒にガンになるなら、いいだろ」

「は・・」


未だ赤い顔でそう言ったトシに、睨むことさえ忘れてしまう。
・・・なんだそれは。
ぽかんとしてトシを見つめると、トシはとうとう背を向けてしまった。
その耳が真っ赤になっていることに気付いて、今まで怒っていたことも忘れて愛しく思ってしまう。


「・・・いいかもね」


なんだか居心地悪そうにする背中に、つい肯定してしまった。
やっぱりトシには敵わないな、って実感した瞬間。


++++++オマケ++++++++

「てめ、また俺の煙草吸いやがったなァァ!」
「一緒に死のうって言ったじゃない!」
「んなこっぱずかしい台詞言ってねェェ!大体自分で買ってこい!」
「このケチ!エロ!マヨラー!」
「関係ねェだろそれェ!」

その後、がトシをも凌ぐヘビースモーカーになったことは言うまでもない。

あとがき

煙草の煙吹き込まれる話が書きたかっただけです(アレ?
土方→煙草、的な理由でお相手土方さん。
相変わらずタイトルとお話が合ってません・・!