愛は罪、キミが罰

共に堕ちましょう。救いなど必要無いから。

忘れていたはずだった。
忘れなければいけなかった。
その手が、その瞳が、その香りが、を惑わすから。
戻れなくなると知っていたから。


晋助の部屋には、明かり等用意されてはいない。 ただ、月の光だけが輪郭を映し出しているだけ。


「変わってねーな、?」

「ッ晋助・・」

「言ったろ?」


そう言ってやはり、クク、と笑った。 喉の奥で笑うのは、晋助の癖だ。
を抱く時は、いつもそうやって笑ってを見つめる。
「瞳で殺す」という言葉はきっと、晋助の為にある言葉に違いない。実際、は幾度となく殺されている。
しかしその傍観するような、熱を帯びた瞳が、を更に快楽の波に引きずり込むのだ。
でなくなるような恐怖感さえ感じる、そんな瞳が。


「お前は他の男じゃ、駄目なんだよ」

「んッ」

「なのに、何故だ」


掻き抱くように力を込められて、晋助が震えていることに気付いた。
何時もを抱きしめていた晋助が、こんなに小さいと感じたのは初めてだ。 いつだって前しか見ずに歩いていたはずの、晋助が。


「何故だ」

「・・・・」

「俺が嫌いか?」

「そんなこと・・ッ!」


ある訳が無い。そう答えれば、また前のままだ。
晋助に守られ、愛され、それだけを幸せとして生きていた、前ののままだ。
それでは、駄目だ。 晋助がいなくなったら、は。


「駄目に、なるから」


ぽつりと呟いた言葉は、晋助を驚かせるには十分だったようで、その魅力的な瞳は大きく見開かれた。
珍しい、晋助がこんなにも驚くなんて。はぼんやりとその綺麗な顔を見つめて思った。
暫くこちらを見ていた晋助は、ふ、と口元を綻ばせての耳に接吻する様に息を吐いた。 それだけでの肩は跳ねる。
それを確かめて、更に晋助の満足げな声が、聴覚を刺激する。


「それで、良い」


抱かれる度に晋助に溺れていく自分が怖くて、逃げ出した。一度は忘れたはずだった。
なのに、また、同じことを繰り返すのか。
は、「逃げなさい」と叫ぶ頭の隅の自分に、自問自答を繰り返した。


「・・愛してる、


そう言って接吻を繰り返すこの男を振り払うことが、何故出来ただろう。
は気付いてしまったんだ。 この男を、一度も忘れたこと等なかったのだと。

あとがき

相変わらずゴーイングマイウェイな高杉さん夢。
一度高杉さんに捕らわれたら逃げられません、的な。
もうトリモチか高杉かってくらいしつっこいと良い(比べるなよ)