独特の感触が喉元を冷やす。
ここまでは戸惑いなく出来るのに、これから先は知らない。


「・・っ」


怖い。その感情だけがあたしの身体を支配してしまうから。
それまであたしを優しく見てくれていたはずの彼が、突然悲しげに背を向けるから。

ねぇ、ねぇ、最後まで見てよ。
目を逸らさないでよ。
「一緒にいこう」って、言ってよ。

あたしがいくらそう願ったって、彼はこちらを向いてくれやしない。
前みたいに、手を差し出してはくれない。


「・・・レ、ックス・・レックス、レックス、レックス・・ッ!」


鈍い光を放ってあたしの手から落ち行く銀を見て、彼の背は消えて行った。



たい現実
(貴方の熱と、ナイフの切っ先)

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