小高い丘の上で、その女(ひと)を見つけた。縮こまるようにしゃがんだ後姿は、また小さくなっていて、年月だけではない何かが彼女を責め立てているのは確かだった。


「此処にいたのか」


そっと声を掛けると、ぴくんと小さな肩が揺れる。勢いよく振り向いた彼女は、俺を見ると弱ったように微笑んで、また視線を戻してしまった。


「・・びっくり、した」


彼女は俺に背を向けたまま、自嘲したように笑みを零した。その笑みが何を示しているのか、俺には痛い程解った。


「ごめん・・驚かせたか?」

「ううん、あたしが勝手に・・」


彼女はまた自嘲気味に笑って立ち上がり、漸く視線をこちらへ寄越した。


「あの人、此処が好きだったでしょう?
 だから、此処にいれば会えるんじゃないか、って・・」


みるみるうちに涙を溜めていく彼女を、俺はただ見つめることしか出来なかった。


「・・・、姉さん・・」


赤い光が、俺と彼女のふたりだけを照らして輝いている。 傍らに咲くガルバナの花が、一層赤く見えた。 彼女は、一筋の涙を流して小さく呟いた。




(2つしかない影なんて、見たくないから)

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