安全圏で悠々と生きていたにとって、ラビの告白を受け入れてしまったことは人生最大の欠点と成り得るかもしれない。 お蔭様で最近のの毎日は落ち着く暇もなく過ぎていく。 「、ー!」 「聞こえてるよラビ」 苦笑を押さえて、部屋の扉を開ける。 にこにこと笑うラビの顔が見えたと思った途端、息苦しさに襲われた。 「!ラビ・・」 「会いたかったさ、」 ぎゅう、ときつく抱きしめられて痛さに思わず顔を歪めたが、ラビからは見えない。 そのままの状態で暫く立ちすくんでいた。 キスをするように顔を近付けてやっとの異変に気付いたらしいラビは、小さく謝罪して部屋の扉を閉める。 「ごめん、。大丈夫か?」 「うん、大丈夫」 言って笑うとラビも笑い返してくれる。 の顔を見ると嬉しくて、なんて恥ずかしい台詞が聞こえてくるから困ってしまってラビの顔が見れなかった。 顔を背けたままラビをテーブルへ誘導し、紅茶を入れようとカップに手をかける。 背中にラビの歓声を受けて。 「、これ・・!」 「読みたいって言ってたでしょ?この間本屋さんで見つけたんだ」 ラビが今手にしているのは、前にラビから、読みたいけど手に入りにくいと聞いた本。 本好きのラビが言う通りなかなかに出版数の少ないものではあったが、探索部隊としてエクソシスト以上に世界を回り情報を集めるにはそう難しいものでもなくて。 「ラビにあげる」 「いいんか!?」 「うん」 「大好きさー!」 ラビはキラキラと瞳を輝かせて何度も御礼を言った。 こんなに喜んで貰えると、任務の度に書店や図書館などを虱潰しに当たった甲斐があるというものだ。 嬉しそうに表紙をめくるラビを横目に、二人分の紅茶を入れる。 二人で買ったペアのカップをテーブルに置いて、は本に夢中のラビを眺めた。 ベッドに俯せになって肘をつき一心に本を読み耽るラビの顔には、長い睫毛が影を作っている。 綺麗な赤の髪はベッドサイドの窓から入り込む光に透けて尚更キラキラと輝いていた。 それを見つめて、小さく小さく息を吐く。 嫌な想像ばかりが浮かんでは消えて、自然と眉をしかめてしまう自分に嫌気が刺した。 知りすぎたが故の想像は途絶えることがないから、この"ラビ"がいついなくなるのかなんてことは頻繁に考えてしまう訳で。 全く、人間とは面倒な生き物だ。 「ねぇ、ラビ」 「んー?」 本に気を取られて、それでもちゃんと返事はしてくれるラビに少し安堵する自分がいる。 こんな些細なこと、何でもないのにね。 馬鹿な自分に対する苦笑をかみ殺して、は続ける。 「もしあたしがいなくなったら、ラビは悲しい?」 「は?」 素っ頓狂な声を上げて、ラビはこっちを見上げた。 本を見つめていたその瞳が大きく見開かれ、を映す。 悲しいか、なんて、馬鹿な問い。 ラビは悲しかろうと悲しくなかろうと、時が来れば行っちゃうんだから。 ・・それでも。 「悲しい、に決まってるさ」 「ほんと?」 「当たり前」 ラビのその言葉に、安心するがいる。 ぎゅう、と音がしそうなくらいきつく抱きしめられて、は静かに息を吐いた。 揺れるように刻む振動は、か、彼か。 「じゃあ、明日もこうしてね」 目を閉じて小さく言ったら、唇に熱が触れて、ラビが口付けてきたのだとわかった。 返事をしないラビの背に腕を回して、身を預ける。 薄らとする意識の中で、はただひたすら自分に言い聞かせた。 彼は肯定の意を、唇に乗せたのだと。 |
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