ただ、虚しかった。空っぽだった。
だから、終わりにしようと思った。
ただ、それだけ。




「・・い・・おい、お前」

「・・・・、?」


薄らと取り戻した意識の中で、瞼の裏の眩い光に眉根を寄せた。
ぼんやりと脳に響く、低めの声が心地良い。
眩い程の光に黒い影が被さって、は漸くそろそろと目を開けた。
目の前には、一人の男が立っていた。
鋭い瞳、漆黒の髪。咥え煙草のその男は、呆気に取られた様子で此方を見ている。


、どうしたんだっけ・・?


霞掛かった記憶を手繰り寄せるようにこめかみを抑える。
ズキズキと痛む頭をフル稼働させて、先程までの行為を思い起こした。


ああ、そうか。は・・・


如何にか思い出し、自分の丈夫な体に視線を落として苦笑を漏らす。
そして頭上で不安げな眼差しを向ける男に視線を戻した。


、」

「屋根にでも上ってたのか?空から落ちてきたぞ」


男は背後の建物を指して呆れたような瞳を向ける。
は何と返すか迷いつつ男の指先を追った。
そして、漸く気付いた。


「ここ・・・どこ?」


男の指していた建物を見てはぽかんと口を開けた。
この周辺はビルやマンションばかりのはずだ。そういうところを選んだのだから、間違いなどない。
しかし、男の示す建物はどう見てもただの一軒家。今時珍しい昔ながらの瓦屋根だ。

どう見たって、が飛び降りた10階立てのビルなどではなかった。



時空を超えた迷子
(天国か地獄か、2択じゃなかったの?)


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