くらくら

甘党は甘い眩暈をも引き起こす。


「あー・・暇だなァ」

「ならバイトでもしなよ」

「俺ァ縛られるのはごめんだね。銀さんは自由が似合うからさァ」

「またそんなこと言って」


小さくため息を吐くと、棒付きキャンディーをモゴモゴ言わせながら、銀ちゃんはぐたりとソファに倒れこむ。
はその隣でぼんやりとその様子を眺めた。
いつもは銀ちゃん専用社長イスにふんぞり返ってる銀ちゃんが、何故か今日はの隣にいる。
ソファに寝ることはしても、座ったりしてる銀ちゃんは初めて見た。ふんぞり返ってはいるけど。
背中越しに銀ちゃんの腕が当たって、何だかちょっと熱い。


、お前」

「な、何!」

「顔、赤い。熱でもあんのか?」

「え、まさか!ないよー大丈夫大丈夫!」


あはは、ひくつく頬に無理やり笑顔を貼り付けた。
銀ちゃんのことが好きだから、こんなに近いと緊張するんです。なんて言えないから。
どうやって離れようかと思い悩んでいると、銀ちゃんの腕がの肩に回ってきた。
やめてやめて、心臓に悪い!


「ふーん?の割りにはあっついなァオイ」

「ッな!」


空いた方の手での胸をぺたりと触る銀ちゃんを見遣り、は絶句した。
当然ながらの熱や心音の速さは、銀ちゃんに伝わってしまう。
ていうか普通体温計るって言ったらおでこでしょーがッ!なんで胸!?


「なななな何!?」

「お前が嘘吐くからだろーが」

「嘘なんか吐いてないし!大体胸触る!?おかしいよねコレ!絶対おかしいよね!」

「るせー」


ふん、と視線を外す銀ちゃんに食って掛かる。
の気持ちも知らないで、この人はこういうことばっかりしてくるんだ。
お陰でいつだってドキドキしっぱなし。


「ちょっと黙ってなさい、コレやるから」

「んむッ!?」

「オラ、旨いだろ?」


銀ちゃんがさっきまで舐めてたキャンディーが、今はの口の中。
これってもしかしなくても、間接キス?
意識し出したら尚更熱があがる。熱くて熱くて、変になりそうだ。
それもこれも全部銀ちゃんのせいで。 腹立たしげに銀ちゃんを睨んでやると、銀ちゃんは何故か頬を赤らめた。


「んだよ、折角我慢してやったのに」

「?」

「馬鹿

「んぁ!」


何ですって、と言いかけた言葉は遮られた (元々キャンディーのせいで何を言ってもわからなかったかも知れないけど)。
カラン、と音が鳴った。キャンディーが床に落ちたらしい。
それを目で追う余裕なんて無くて、ただ妙に近い銀ちゃんの顔しか見えなくて。
いつだって銀ちゃんの近くはドキドキして息苦しかったけど、何故だか今回の呼吸困難はいつもよりレベルアップしている。
だって、何かが口の中に入ってきて動いてて全然呼吸がままならない。
の口の中なのに、以外のものが支配してるような、そんな感覚。
それでも、銀ちゃんのアップだけは視界から外せなかった。


「ぎ、んちゃ・・」

「ん」

「なに、これ」

「何だと思う?」


身体が熱くて、何が何だかわからない。
銀ちゃんが、したの? の酸素、とったの?


「なん、で?」

「・・言わなきゃわかんねェ?」


小さく頷けば銀ちゃんは低く笑った。
そして、またの酸素を奪う。 の口の中に、運んでくるんだ。
銀ちゃんの想いを。甘い言葉を。

あとがき

私は何を書きたかったんだろう・・と思ってしまうお話ですね。
何とか修正してみましたが。どうなんだ、コレ?
書きながら、銀ちゃんってキスうまいんだろうなぁとか思ってみたり。