「起きなさーい」

「あァ・・すぐ起きる。すぐだからほんと」



春眠不覚暁 - 坂田銀時ver -



それだけ言って、また寝息をたて始める銀ちゃん。

・・毎朝これだ。
溜息混じりに辺りを見渡せば、そこかしこに散らばるジャンプ。
ガキ、と呟いてデコピンしてやっても、この大きな子供は小さく唸るだけ。

そんなに結野アナが見たいなら新八くんにビデオでも頼めばいいじゃん。
そう思いつつもは毎朝律義に此処にくる。
理由は簡単。


「なんで気付かないかな、この天パは・・」


ふわふわの髪を弄べばうーんと唸って少し顔を歪める銀ちゃん。
胸がキュンとする
ああ、やっぱり。


「すき、なんだよなぁ・・」


そう言っても銀ちゃんは相変わらずすやすやと寝息をたてていて。
一方通行のこの想いを思い知らされる。


「あーあ、馬鹿みたい」

「誰が馬鹿だって?」

「げ」


布団の山から銀ちゃんの声。

一気に血の気が引いた心地がした。
聞かれた?


「い、いつから起きてたの?」

「起きなさーいから」

「始めからじゃん!すぐに起きなさいよ!」


布団の上からぺしっと叩いて怒鳴る、の顔の赤いこと。
どうか気付いてませんように!


「今日の朝飯何ー?」


布団から顔だけ出して欠伸を噛み殺しつつ銀ちゃんが口にした言葉に、はほっと胸を撫で下ろした。


「え、えっとね、卵焼きに納豆に味噌汁かな」


そう言うと銀ちゃんはの方を見てぽつりと呟く。


「糖分が足りねェな」

「またぁ?」


相変わらずの銀ちゃんの台詞に呆れつつ笑う。


「何が欲しいのよ、買ってきてあげるから」


だから起きてよ、そう言えば銀ちゃんはやっと起き上がってくれた。


「じゃあ、」

「ぎゃ!?」


前に腕を引っ張られれば前のめりになるのは当然の摂理で。


「色気ねェ声」


誰のせいだよ。
そう言いたいのに真っ赤になった顔を上げられない。


「何なのよ・・?」


仕方ないから銀ちゃんの胸に顔を埋めたまま、やっとの思いで声を搾り出した。


「朝飯」

「は」


この状況でよくもそんな台詞が出るもんだ。
食いたきゃ食ってこいよ!と怒りをあらわにしたいのだが、寝ぼけているくせに力だけは強い銀ちゃんにがっちりホールディング(決して抱擁なんてロマンチックなもんじゃない)されていては手を出すこともできない。
誰かこの男どうにかして・・!
じたばたもがくに銀ちゃんは構わず、


「いただきます」

「はァァ!?」


言うなり首筋に噛り付いた(どんだけ空腹なのよこいつは!)
やばい、このままじゃ本当の意味で食われる・・!
焦ったに残された道はふたつ。
諦めて食われるかそれとも――・・・


「ッいい加減起きろこの寝坊すけーー!」

「ぐはッ」


鳩尾にパンチを食らわすか。
布団にぐったり沈み込む銀ちゃんを見て少し罪悪感。
でも寝ぼけて人にかじりつく方が悪いんだから。


「朝御飯、冷めないうちに起きてよね!」


聞こえているんだかいないんだか、むしろ気を失っていてもおかしくない銀ちゃんに声をかけると、は何事もなかったように新八くんの手伝いに戻った。


「あれ、さん顔赤いですよ」

「い、今銀ちゃんとプロレスごっこしてたからかな!あーいい運動になった!」

「そうなんですか・・(プ、プロレス?)」




〜その後〜

「あの鈍感娘が・・寝ぼけてんのはどっちだ」

「あ、銀さんやっと起きましたか」

「新八、連れてこい」

「?なんか用事ですか?」

「おう、リベンジだ」

「(あ、プロレス負けたんだ・・)」






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