「政宗様、こちらです!」

「おい、!あんまり走るんじゃねぇ!転ぶぞ!」


大声で呼べば、政宗様は笑って後ろを歩いてくる。 走っていることを咎められても、それが政宗様の優しさだから、余計に嬉しくなる。 そして、余計にお転婆をする。 だってそうすれば政宗様は、放っておけない、と言って側に来てくれるから。 あの時、政宗様の温度を初めて感じたあの瞬間のことを思い出す。


「心配はいらねぇ、俺が世話してやるからよ」


そう言って抱きしめてくれた政宗様。 嬉しくて嬉しくて、ろくな返事も出来ないくらい言葉にならなかったけど、お優しい政宗様に触れての心は安心を覚えた。 政宗様をお慕いする気持ちはその時芽生えたまま、今も変わらずここにある。


「きゃあ!」

「・・・言わんこっちゃねぇ」


ぬかるみに足を取られて転ぶに、政宗様は呆れたような声を出した。 注意されていたのに転ぶなんて。政宗様が見立ててくださった着物が汚れてしまった。 傍らまで寄ってきた政宗様は目線を合わせるようにしゃがみ込んでを見つめる。


「ったく、何度目だ?」

「申し訳ありません・・」

「ほら、俺の手を離すな。OK?」

「・・はい!」


差し出された手を握ると、は勢いよく起き上がった。 政宗様はそれを見て笑う。 幸せとはこういうことを言うのだろうか。 政宗様と繋いだ手を離さぬよう、しっかりと握りなおした。



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