気付いた時には既に自分の身体が自分のものではないような感覚がした。 は戦場(こんなところ)で何をしているの?


「ここで何してる」

、は・・」


そこまで言って、漸くは自分が言葉を発せることを知った。 でも、続きの言葉が出てこない。 ふるふると首を振って俯くと、頭上の男は間髪入れずに次の質問をしてくる。


「お前、名前は」

・・・」


そういえばそんな名前だった。 口をついて出る言葉は確かに自分のものなのに、頭はぼんやりとして霧が掛かっている。 怖い、その想いだけが脳内を占めて、はがくがくと震えていた。 目の前の男は、の敵だろうか。味方だろうか。 それを確かめる術を模索しながら男の方を見遣ると、男は手を差し伸べてきた。 不可思議なその行動に、ついと男の顔を見つめる。


「俺は政宗だ」

「ま、さむね・・?」

「そうだ、


まさむね。その名は、の心を乱した。 捜し求めていた何かを見つけた感覚に似ていた。 そっと男の手を掴む。 ああ、やっと見つけた。 そんな想いがの身体を駆け巡る。 笑い方もわからないのに、は自然に笑顔を作っていた。


「帰るぜ、小十郎」

「政宗様、この女を如何するおつもりで?」


まさむねよりも一回りは年上だろうか、家来らしき男が困惑を隠せない様子でまさむねと話している。 暫くの会話の後、家来の男は諦めたようにを馬に乗せた。 どうやらを保護してくれるつもりらしい。


「ありがとう、ございます・・」

「政宗様の命だからな」


眉根を寄せたまま、男は返した。 まさむねはこっちを一瞥すると、帰るぞ野郎共と叫んで馬を飛ばした。



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