全てを捨てるのは、案外簡単なことだと知った。 「はあ、はあッ・・」 足は重くて、視界は霞んで、それでも走り続けた。 急速に冷えていく背中の体温が、を追い立てるから。 「――ッ、ラビ・・」 呟くように名を呼び、は足を止める。 背中に触れる彼の体は、を冷やす以外何もしてくれなかった。 さっきまでは、をあんなにも暖かくしてくれたのに。 頭の中が真っ白で、何も考えられなくて、それでも思い浮かぶのは彼の笑顔。 ――大丈夫さ そう言って笑った貴方を、一人にしなければ良かった。 きゅっと唇を噛み、だらんと垂れた彼の腕を自分の首にかけ直して、はまた歩き出した。 大きな闇を、求めて。 「甦らせて、あげましょうカ?」 |
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