気付いた時には手遅れだなんて、なんて有りがちな話だろう。 「ラビ、」 小さな部屋に響く、の声。 いつもの声が返らなくて、しかしそれが当たり前になってしまったことに苦笑を漏らす。 何もない部屋を見回して、吸い寄せられるように窓辺に腰を下ろす。 ふと、此処には彼のベッドがあったのだと気付く。一緒にたくさんの時間を過ごしたベッド。 そっと床に寝そべれば、冷たい温度に寒気がした。ああ、そういえばもう冬だっけ。 ふと向けた窓の外には、儚く白いものが降り積もる。 ラビが遺したもののひとつであるマフラーを抱きしめて、は目を細めた。 返してもらいに来るから、そう言ったラビの笑顔がとても綺麗で、は頷くことしか出来なかった。 あれから、幾年が経っただろう。 「早く、取りに来なさいよね・・・」 呟いただけなのに、の唇は白い息を吐きながらその言葉を響かせた。 寒いはずなのだけど、もう感覚がないくらい麻痺していてわからない。 「馬鹿、ラビ」 眉を潜めて唇を尖らせる。 ・・・馬鹿は、だ。気休めでしかないラビの言葉を信じて待ってるなんて。 ふ、と自嘲すると、また白い息が姿を現した。 |
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