久しぶりに浮かんだ水滴がの頬を伝うまでに、ゴツゴツした指がそれを掬った。 その感触がを数年前に引き戻す。数年前のあの日に。
あの日も今日のような天気だっただろうか。今にも泣きそうに、雲を寄せ集めた空。 泣きたいのはこっちだ、とぼんやり思ったのを覚えてる。 実際、一生分ほど泣いたのだけれど。

それも全て、今目の前にいるこの男のせいだと知りながら、それでもは頬に触れるこの手を振り払うことなど出来ないのだ。 ずっと欲していたぬくもりを自分から手放すことなど。


「何、してんの、現世(こんなところ)で」

「第一声がそれッスか」


若干呆れたように笑う彼はあの日のままで、やっぱり彼なのだと再認識する。 それと同時にこみ上げるのは、懐かしいほどの、感情。

いとしい、いとしい
(忘れたと思ってた、こんな気持ち)

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