くしゅん!
小さなくしゃみが耳に入って、目が覚めた。
そっと腕の中のを見るが、彼女は瞳を閉じたまま身を縮こまらせて俺の胸に擦り寄り、熱を求めてる。


「寒いのか?」

「あ・・ごめん、起こした?」

「いや、いいよ」


申し訳なさそうに謝る彼女の肩を引き寄せて、にっこりと笑う。
彼女も自分の熱を預けるように、しっかりと抱きしめ返してきた。

強く、強く。
今、この瞬間、彼女は俺だけのモノ。
そんな錯覚さえ覚えるほどに。


「なァ、もし俺が」


気付けば口に出していた。ずっと聞きたかったこと。
もし、俺が君の敵だと言ったなら。


「言わないで」


小さく首を振る彼女は、悲しげに俺を見つめている。
何かを感じ取ったらしい。ぎゅう、と更に強く抱きしめてきた。


「お願い、あと少し・・」


泣きそうな声でそう告げられれば、俺にはどうすることも出来ない。
小さく、ごめん、と呟いて、彼女の肩口に顔を埋めた。
彼女の望みはどんなことでも叶えてやりたいとさえ思うのに。



無力 な自分に、 きたくなった。
(結局、俺は彼女を暖めることも出来ないから)


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