振り払われたその手を、僕は無理矢理彼女の身体に巻き付ける。抱きしめる、きつく、きつく。このまま溶け合ってしまえばいい、そうとさえ思うから。


・・」


何度呼んでも返事なんて返ってこないけど、僕は呼ぶ。優しい声、柔らかい眼差しと共に。
"あいつ"を演じるんだ。例えこの胸が軋んでも。


「好きですよ、


優しく、"あいつ"のように穏やかに囁けば、真っ赤な瞳が揺れた。久しぶりの彼女の笑顔。


「イオ、」


言い終わる前に、孤を描く彼女の唇を自分のそれで塞ぐ。冷たい唇を、身体を温めるように。
彼女から巻き付いてくる腕が、身体が、何よりその笑顔が、僕の心を冷やして止まないけど。



願うだけ無駄だというなら、いっそ
("イオン"でいれば、君は僕を愛してくれるだろ?)


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シンク夢。イオンの恋人ヒロイン。
イオンは既に死んでます。
(2006/10/9)


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